横浜市中区寿町「さなぎの食堂」&NPO「さなぎ達」

さなぎがチョウになれたらいい、でもさなぎのままでもいいんだよ

さなぎの食堂 店頭の看板
さなぎの食堂 店頭の看板
1.NPO「さなぎ達」とは
 1983年、中学生によるホームレス殺人事件が起こったのをきっかけに、夜回りパトロール(木曜パトロール)を開始したグループです。ドヤ街である寿町を舞台に、「医衣食職住」の5つの面から「路上生活者とそれに至るおそれのある人々」の自立自援をサポートしています。主にメンタル面の支援で活動し、2001年にNPO法人を設立しました。「さなぎがチョウになるといいな。でもチョウになれなくてもいい、さなぎのままでもいい」という意味で名づけたそうです。
2.横浜市中区にある寿町とは
 200m×300mの一角に、簡易宿泊所(日雇い労働者のための宿)が120軒も立ち並び、6,500人が暮らすいわゆるドヤ街です。人口の8割が生活保護受給者。教会の炊き出しが1日1,000食ぐらいあるとのことです。路上生活者は約100人。
3.さなぎの食堂とは
 2002年オープン。現在1日300食。もともと、横浜市の困窮者支援制度として714円で3食の食券支給があり、その制度の指定飲食店のひとつとして「あたたかい食事を食べてもらおう」と始まった食堂です。ここの特徴は2つあります。
(1)余剰食材を使う
 横浜市都市整備局まちづくり担当者のコーディネートにより、ローソン厚木工場の余剰食材を1日30〜40kg提供してもらっています。(ただしこの量は全体量の1割以下。安定供給は期待できないのでメインメニューではなく、小鉢などに使って提供している) この他、抜き取り検査の余り輸入食肉や、箱に穴が開いて売り物にならない食材など、「ワケアリ」食材を使い、原材料費を抑える工夫をしています。「セカンドハーベスト」(フードバンク事業)からも提供を受けています。
(2)仕出し弁当で募金
 現在1日200食お届けしている、オフィス向け弁当の代金550円のうち、50円をホームレスの方の食事に寄付してもらっています。昨年から新規に始まった事業。これは1ヵ月分のメニューが決まっているので、(1)の余剰食材は使えません。    
 以上のお話は、「さなぎの食堂」のシェフ、土谷伊麻里さんがお話くださいました。土谷さんは33歳。元ホテルレストラン勤務で、ボランティア活動から入ってここのシェフになられた男性です。
4.さなぎの家
 2001年スタート。雑居ビルの1階に「居場所」としての10畳ほどのスペースがあり、生活保護など生活全般の相談に乗ってくださいます。癒しの場。SOSの場。古いカウンターとソファが置いてあって、何気ない世間話をしながら、お茶を飲んだりたばこを吸ったり。でもホームレスの方にとって、命綱のような場所なんだろうなと感じました。
5.視察の目的
 生活者ネットワークの多摩北エリアごみプロジェクトで、「ごみ減量を、ごみの面だけでなく、職と結びつけ、総合的に取り組んでいる例として学ぶ」ことを目的として、議員他12名で行ってきました。当日は冷たい雨の一日で、多摩地域では見かけない「ドヤ街」の雰囲気がひときわ肌にしみましたが、その中であたたかい食べ物を!ほっとする居場所を!と、精一杯働いていらっしゃる姿を見て、自分たちも精一杯活動していこう、と思いました。