安倍の、安倍による、安倍のための解散。「七条解散」の是非を問う。
旧聞に属しますが、安倍首相は衆議院を解散しました。今回の解散については疑義があります。いわゆる「7条解散」は首相の専権事項なのでしょうか、大手マスメディアは首相に「解散権」があるとの思い込みがあるようですが、「首相がいつでも好きなときに衆議院を解散できる」と考えているとすれば、それは間違いです。7条解散を憲法がどう定めているかについては、最高裁判所は判断を忌避しています。その是非は国民に委ねられているというのが、正しい憲法解釈です。要するに、この文章を読んでいるあなたが、違憲と思えば違憲、合憲と思えば合憲ということです。
1952年吉田内閣による解散は、この憲法第7条によるものでした。これにより衆議院議員の職を失った苫米地(とまべち)義三衆院議員が、解散の正当性について憲法判断を求めて訴訟を起こしました。これがいわゆる苫米地事件と呼ばれるものです。
最高裁は1960年に「高度の政治性」を理由に7条解散の是非についての憲法判断を回避しています。判決で最高裁は「統治行為論」を根拠に、高度の政治性を帯びた問題は三権分立の元では、司法が介入すべきではないとしました。その上で7条解散が合憲か否かは、「最終的には国民の政治判断に委ねられているもの」としています。これが7条解散をめぐる判決です。繰り返しになりますが、7条解散をあなたが違憲と思えば違憲、合憲と思えば合憲ということです。
また、現在衆議院は一票の格差に関して、違憲状態です。2013年11月の一票の格差「違憲状態」判決で最高裁が示した「一人別枠方式」の変更と「投票価値の2倍未満」の基準は満たされていません。このまま総選挙が行われた場合、雨後の筍のごとく違憲訴訟が起こされることでしょう。そのいずれもが「違憲状態」もしくは「違憲」と判断されることは必至です。違憲とされた選挙で選出された議員に法案を審議する正統性はあるのでしょうか、内閣を組織する正統性はあるのでしょうか、大いなる疑問です。