特別支援教室に望むこと~「特別ではない」インクルーシブ教育を目指して
発達障害のある子どもたちが、在籍校で指導を受けられるよう「特別支援教室(特別支援学校、特別支援学級、とは違います。紛らわしいですね)」が、武蔵野市内の小学校全校12校に配置されてまもなく3年となります。今春からは中学校全校6校にも配置となります。これらは、都の方針によるもの(東京都特別支援教育推進計画2017年2月)ですが、この現状と課題について、生活者ネットワーク市議、西園寺みきこが担当課長にヒアリングを行いましたので、報告します。
在籍児童数は、約220名、初年度の3倍に
2017年度までは、通級による指導でした。それが「児童が移動するのでなく、指導教員が各小学校に移動する」つまり、児童は「毎週決まった曜日に、在籍クラスではなく、個別・グループのいずれかで特別指導を受ける」と変わりました。その結果として、スタート時70名程度だった児童数が、2019年度は220名と、3倍になりました。「特別支援教室」が特別なことではなく、学校現場で当たり前となったと言えます。今後の見通しを聞いたところ、「このペースで何倍に増えるというものではなく、ほぼ頭打ちになるとみている」とのことでした。
指導の内容は? 個別・グループ・併用
武蔵野市の場合、拠点校として、四小・井之頭小・桜野小の3校を位置付け、そこに指導教員の拠点を置く。指導教員は、月曜日は拠点校に出勤。火~金は曜日スケジュールにのっとり、各小学校に出向いて指導を行う。その子に合わせ「1対1の個別指導」「2~4人対1のグループ指導」あるいはその両方。で指導している。つまり、1人の子どもは、週に1コマか2コマ、特別指導を受けている。
個別指導は、その子の認知特性に合わせた指導。特に、読み書きの特性、体幹運動の特性など。一方、グループ指導は、コミュニケーション能力の向上を目指し、ロールプレイ・ゲームを通じて勝ち負けを学ぶなど。発達障害のある子どもは、「状況の変化に弱い」「対人関係スキルが未発達」などが見受けられるますが、在籍クラスで自分を出せずにいた子どもが指導の結果、自分を出せるようになり、司会をできるようになったケースもあるとのことでした。
学校現場の理解は進んだか? 子どもたちは?
スタート時70名⇒2017年度末146人⇒2018年度195人⇒2019年度221人。と増えた。つまり、学校により多少はあるものの、すべての学年に必ず1人はいる。どの教員もよそごととしてでなく自分ごととして受け止めるようになった。その結果として(自分のクラスに当該児童がいるかいないかにかかわらず)「教室内の刺激物を減らす、例:正面の掲示物を減らす。授業中は幕をかけて見えないようにする。など」の実践例が広まってきている。また当初から「特別」ということばを使わず、「〇〇教室」という愛称で呼んでいるので、子どもたちも「きょうは〇〇に行ってくるね」とこだわりなく行動している。そのように学校全体で取り組んでいる。とのことでした。(武蔵野市では、特別支援教室を、はなみずき・かわせみ・こぶし、と呼んでいます)
今後の課題は? 目指すべきインクルーシブ教育の姿は?
広義のインクルーシブ教育は、障害の有無にかかわらず、すべての児童生徒が地域で学ぶということです。しかし、現在は、「特別支援学校(従来の盲・聾・身体など)」に通う子どもは地域から切り離されるのが前提。「特別支援学級(知的・肢体不自由・病弱など)」に通う子どもは、市内の小学校に在籍していますが、いわゆる健常児と同じクラスではなく、校内行事などの時のみ交流するのが前提。小学校就学前に、「就学相談」を受け、健常クラスか特別支援学級か、を「当事者の希望を尊重しつつ」教育委員会の判定委員会で決める。(振り分け、取り出しを行っている、ということ) 当事者から見れば「選別・分離」ともいえる手続きを経る必要があります。
すべての子どもたちが、地域でともに学ぶ、真のインクルーシブ教育を実現していくために、「特別」ということば、概念をなくしていかなければなりません。
ヒアリングに参加された方の声