オランダの教育に学ぶ

産業の歯車としてでなく、一人ひとりを生かす仕組みが幸福度NO1につながる

オランダの教育 2004年
オランダの教育 2004年
都議会生活者ネットワークの海外視察報告学習会に、政策委員西園寺美希子・子ども部会の久保田美愛子が参加しました。
1.心に残ったリヒテルズ直子さんのことばから
 「日本の授業って、生徒は先生の顔と同級生の背中だけを見てるでしょう? 顔を見合わせて本音で語る時間が必要です」「教室が、先生に都合いいようになってるんじゃない?」元教員の私には、グサッと来ました。「最近日本では、学校に地域が入るコミュニティスクールが言われているが、単に地域が入るだけでは不足。学校を『民主的な理想の社会を作る場』とはっきりとらえ、学校側が主体性を持たなければ!」「先生と保護者が協力しやすい制度を作れば、モンスターペアレントは起こらない」日本でモンスターペアレントが出現するのは、構造的必然だったのか!
2.そもそも「学校」のイメージが違う
 オランダの学校は、200人の署名を集めれば誰でも作れる! お金は国が出し、市が建物を作る。私立が7割を占め、助成金は公立私立同額。15分歩くと3つか4つの学校に出会う、というくらいたくさんあるので、子どもと親は学校を選ばざるを得ない。4歳から就学でき、「4歳の代表」「7歳の代表」がいて生徒会に参加。高校生になると学校運営や教員の人事に発言できる。小学生のうちから時事問題を題材に授業を行う。というふうに、どんな家庭の子どもも、学校で民主的に触れ合うことを学ぶ・・・それが、イコール民主的な社会を作ること。
3.その結果の幸福度NO1
 先進国21カ国の子どものWell-being(豊かさ・幸福度)と学力の調査(2007・ユニセフ)で、オランダは第1位。「孤独感を持つ子ども」はわずか2.9%。PISA学力テストでは、フィンランドには及ばないもののヨーロッパ第2位。落ちこぼれを出さないために進めてきた教育改革が、幸福度と学力両面で、明確な成果となってあらわれた。
4.日本の子どもは不幸? もっと自尊心を高める教育を!
 一方、日本の「孤独感を持つ子ども」は何と29.8%! 10%超は日本だけ?! PISA学力テストではオランダとほぼ互角にもかかわらず、である。日本の教育界は、学力向上を目指しPISA1位フィンランドにばかり注目しているようだが、私たちの未来を担う子どもたちの3人に1人が自尊心を持てないでいることを、真剣に受け止めるべきではないだろうか。(幸福度調査には日本不参加)
5.教育改革はいつから?
 60年代から取り組みが始まり、85年から改革が始まった。現在30代の親世代も個人尊重の改革後の教育を受けてきたわけです。
6.一人ひとりを生かすしくみって?
 子ども一人ひとりに対し、カルテのような記録作成を義務付け。どんな子も右肩上がりに発達できるよう支援するのが学校の役割。個々のニーズに合わせた教材を探せるように国立カリキュラム研究所やサポート機関が援助する。宗教系・非宗教系・公立など、いろいろな理念の学校があって、移ることができるから不登校も起こらない。
7.やり直しがきく仕組み
 地域の教育センターで補習もできる。一斉に入学・卒業という制度でないので、いつでもやり直せる安心感がある。特殊学校をなくし、特別支援を拡げてすべての障がい児も一緒に学べる学校にするというオランダの方針は、今の日本の方針と比較して、参考になりました。
8.最後に
 日ごろなんとなく違和感があったことに対し「なるほど!」と目を開かれるお話を聞き、頭がすっきりしました。現役の教員時代に聞いていれば、もっと子どもたちに役立てられたのに、と申し訳ないような気持ちになりました。
子ども一人ひとりに寄り添うオランダの教育は、子ども達の自尊感情を高める教育でもあります。オランダのシステムを日本の教育にそのまま取り入れるということではなく、私たちの地域の子どもをどのように育てていくのかを今回の学習会に参加したことでもう一度考え直すきっかけとしたいと思います。